やきものの原料は、長石や珪石、蛙目、カオリンなどです。
地球上に気の遠くなるほど長い年月をかけて堆積した、土や石からなる天然資源なんですね。
土や石なのだから埋蔵量は無限のように錯覚しますが、不純物のない良質なものは限られています。
粘土分のカオリンは、化粧品のパウダーや胃腸薬など医薬品にも使われています。
医薬品?口にするもの?とびっくりですが、不純物のないカオリンはキレイです。
工業原料全体として考えると、採掘量は多いでしょう。
このカオリンも最近では輸入に頼らざるえない現状があります。
良質な土のとれる鉱山がある土地は、窯業産地として大昔から発展してきました。美濃もそうです。
そんなわけで、窯業においても資源の枯渇は無視できない課題です。
加納の工場内には、リサイクル容器があちこちにあります。検品で外れたタイル破片と、成形不良の陶土屑を分別して入れています。
外にはプールのような大型の容器が設置してあります。
埋めて捨てる最終処分ではなく、再生原料にしているのです。
地元の釉薬会社がこれを集め循環型リサイクルシステムを構築しています。
タイル破片は粉砕されてすり潰され、白いセルベンと呼ばれる再生原料になります。セルベンと陶土屑、純粋なバージン原料を調合して成形のための窯業原料に再生するのです。
いくつかの原料を調整して混ぜ合わせるほど、土の欠点を補い合い長所が出て、良くなるのは、「やきもの」の特質です。
釉掛けして焼成されていても、粘土として使えるのはなぜ? 釉薬屋さんに聞いてみたところ、細か~い粉末状にすり潰すため、影響がないんだそうです。
セルベンは7~8年前に美濃焼業界と岐阜県セラミック研究所が、バージン粘土と混ぜた再生坏土(RCL粘土)を作った運動によって、一般的にも認知されたのがきっかけだったと思います。
RCL粘土のセルベンの含有率は現在20%ですが、技術的には50%まで可能だといわれています。一度焼成した再生土なので、「強い。焼成温度も低くなるので燃料の消費を減らせる」という専門家もいます。
素焼きの陶片を粉砕した物をシャモットといいますが、そういえば、大物制作の時に混ぜると、歪みやワレが少なくなります。それと同じでしょう。セルベンを入れるとろくろも挽きやすくなります。
タイルの場合はどうでしょう? タイルの成形は粉末の陶土(=坏土)を油圧プレスで成形する乾式成形です。 リサイクル原料の成分表のひとつを見ると、セルベンは5%。焼成前の成形不良品や残土とセルベンを含む窯業廃土全体は57%で、バージン粘土は33%。
技術的にすぐれた原料ができています。
再生坏土で製品化した大石面状のタイル
環境を考え、リサイクルに積極的に取り組んだ製品作りは不可欠です。(Muto)